「面白きこともなき世を面白く、住み成すものは心なりけり」
〜日々、瞬間の面白さをキャッチする心の余裕を〜

叶えた夢が、後に自分を限界まで追い詰める原因になるとは思いませんでした。20代半ば、僕は念願だったタレントになりました。最初はテレビに映るだけで嬉しかった。ロケに行き、その日のできが30%でも満足。でも、だんだんと視点が変わってしまったんです。たとえ95%良い仕事ができた日でも残りの5%の方を見てしまう。俺はダメだ、このまま続けられるのか、俺はダメだ……。今思えばそれが、うつ病の初期段階だったんです。
好きだからこそ、きつい。仕事が好きで、「この先も続けたい、離れたくない」と思うほど、実力以上のものを求め、必要以上に自分を責めました。大好きな恋人を失いたくない一心から借金をしてまで貢ぐような感覚に似ているかもしれません。結果、病気は進行し、自殺未遂まで起こしました。
かつての僕は〈うつ病なんて弱い人間がなる病気〉と決め付けていました。下を向いている人には、「小さいこと気にすんな!」と明るい声で簡単に言い、どうした?って目線を合わせて話に頷くこともできなかった。自分に対しても同じ。執着することを善しとして、そこから離れてみるのも勇気だと気が付く余裕はありませんでした。
仕事もお金も健康も、全て失った僕を救ってくれたのは人であり社会です。奇しくも自分を病気へ導いたものに再び助けられている。今は、僕の「面白いこと」は日常の中にあることが分かります。誰にとっても人生は8割方がつらい。でも、一日をちゃんと振り返れば瞬間瞬間の面白いことが必ずある。2割の喜びに気がつく心が、その先の大きな差をつくるのではないでしょうか。
渡辺 正幸Watanabe Masayuki
1975年福岡県小郡市生まれ。高校卒業後、サラリーマンを経てタレントとして活躍。うつ病を克服後、同じ病気に苦しむ人や家族を支援する組織「ビリーブ」を設立。講演やボランティア活動等を行う。宅配業を営む傍ら現在もうつ病や不登校に悩む子供たちに向かい合う。
http://www.believe-watanabe.com/










